恋日和 〜キミに届かない恋でも〜
いなくなるだなんて考えたくないよ。
だけど、きゅうにいなくなったら、もう莉子となにも話せなくなっちゃうから。
できるときに、ちゃんと話したい。
ーーあたしだけじゃなくて、莉子も。
こっそりと、別れの準備をはじめてしまっているんだ。
「……ねえ、春馬」
「ん?」
視線のさきにある、ひざのうえに乗せてる手にぎゅうっと力をこめる。
「あたし、怖い」
「……うん、俺も」
「ものすごく怖いよ……」
そんな小さな声は、風に乗ってどこか消えてしまった。
涙をこらえようとして、手に力が入る。
そんな両手のこぶしは、すごく震えている。
「大丈夫だよ」
「でもっ」
「大丈夫だから」
春馬がそう声をかけてくれて、背中を優しくさすってくれる。
〝大丈夫〟って、いまは信じたい。
きっと莉子は大丈夫。
いまはただ、体調をくずしただけ。
ーーきっと、そう。