恋日和 〜キミに届かない恋でも〜
「落ち着いて、希子ちゃん」
「莉子は!? 莉子は大丈夫なんですか!?」
福原さんの腕をがしっと掴んでそう聞いても、福原さんは複雑そうな顔をあたしから背けた。
胸が苦しくて、うまく息が吸えない。
『大丈夫』、ただそのひとことでいいから、あたしにそう言って。
「……ごめんなさい、希子ちゃん」
「ーーっ」
だけど福原さんは、顔をゆがめてそう言った。
どうして謝るの。 ……どうして?
悔しいのか悲しいのか苦しいのか、わけがわからなくなるほど、いろんな感情がごちゃまぜになる。
涙が溢れたって意味はないのに、止まらないほど溢れては、頬をぬらす。
莉子、莉子。
届かない声で必死に呼びかけても、扉の向こうにいる莉子にはきっと届かない。
お願いだから、無事でいて。
あたしには、ただそう願うことしかできなかった。