恋日和 〜キミに届かない恋でも〜
お母さんにも笑顔でそう告げて、玄関のドアを開ける。
「おはよ、春馬!」
「はよ」
赤のネクタイをしたブレザー姿の春馬は、卒業したときよりも少しだけ大人っぽく見える。
「行くか」
「うん」
春馬の左隣を歩いて、駅に向かう。
そこから電車に乗って2駅、学校の最寄駅から高校までは徒歩5分。
なんだちょっと、うきうきした気分。
高校生はすごく憧れだったから、楽しみでしょうがない。
「なんか、希子さあ……」
「え?」
「この間よりも笑ってる」
笑いながらそういう春馬に、あたしも笑顔を返す。
莉子がいないことはとても悲しい。
ううん、それよりもっともっと悲しい。
だけど、莉子は消えたわけじゃないから、ちゃんと笑っていられるのかな。