恋日和 〜キミに届かない恋でも〜
そんなことを考えてると、ドンッとうしろから椅子を蹴られて、机に乗っていた右腕がガタッと机からずれた。
こんなことをするのは……。
「ちょっと、春馬!」
「おい、芹沢」
ぐるんとうしろを振り返って春馬に怒りを訴えようとする。
だけど春馬の声とはちがう、怒りが込められた低い声が耳元で聞こえた。
その先生の声で、『あ』と思いだす。
授業中だってこと、すっかり忘れてたよ……。
『はあ』と小さくため息を吐きながら、声が聞こえたほうに体の向きを戻すと。
案の定、数学の花田(はなだ)先生が、あたしのことを鋭い目で見下ろしていた。
「……はい」
「おまえ、数学の成績悪いのによくぼーっとしてられるなあ?」
「すみません」
先生の威圧感に恐れおののきながらも、小さな声で謝る。