恋日和 〜キミに届かない恋でも〜
「希子、泣いてんの?」
あたしの背中に向けて聞こえる、春馬の小さくて低い声。
その言葉に、シーツに顔を当てながらも、首を横に振る。
「じゃあこっち向けよ」
「……嫌だ」
嗚咽をこらえながら、平然を装ってそう答える。
「希子」
「……どうして、来たの」
「岡藤に様子見てこいって言われて」
「そっか」
芽依と実鈴には、さっきグループチャットで少しだけ教えたからだ。
「こっち向けよ」
苛立ちも感じられる、そんな声。
ちょっとだけ、怖い。
だけどその言葉には従わずに、ずっとベッドから離れず春馬に背を向けていると。
うしろからふわっと、春馬に抱きしめられた。
……なんだか懐かしくて、心地よい。
驚きよりも、そんな気持ちがさきに生まれていた。