恋日和 〜キミに届かない恋でも〜
「……離してよ!」
「いつまで泣いてんだよ。ばかみてー」
「だから、泣いてないし」
「おまえって、莉子以上に嘘が下手だな」
どんなに反抗したって、春馬の呆れた言葉が返ってくる。
「でも、莉子のお願いは守ったよ」
春馬にもこの間見せた、莉子の手紙。
それを読んだ春馬は、目を丸くさせて驚いていた。
「辛くねーの?」
「辛くないって言ったら、嘘になる」
「じゃあもう、あいつのこと忘れればいーじゃん」
どこかいつもより優しい春馬。
なんだかちょっと、変だ。
ぎゅうっと締め付けられるように、抱きしめれる。
だけどすぐに、春馬の体は離れた。
『ごめん』という、さっきよりも覇気がなくなったような声が、小さく聞こえた。
「え?」
涙をぬぐって、うしろを振り返る。
暗い部屋のなかで暗い顔をした、春馬。
……きゅうに、どうしたんだろう。