恋日和 〜キミに届かない恋でも〜
キコは……莉子は、もうこの世にいないんだっつーことだよな。
全然実感なくて、信じらんねえよ。
ーーそりゃあ、そうだよな。
だって俺は、いま目のまえにいる希子を莉子だと思っていたんだから。
空を見上げていた視線を、足元へと下ろした。
莉子の手紙。
あれはぜんぶ、本当のことなんだよな?
俺に『キコ』って名乗ったことも、莉子は俺を好きだけど告白を断ったのもーー。
ぜんぶ、病気だったから。
それならそうだって、言って欲しかった。
ちゃんと話して欲しかった。
断られるにしても、莉子の気持ちもちゃんと聞きたかった……。
悲しくて、胸の奥が痛んだ。
それに希子のこと責めたのは、最低だったな。
希子は莉子にお願いされて、俺にはその話をしなかっただけなのに。
明日、ちゃんと希子に謝ろう。
そう胸に決めて、またきれいな夕焼け空を見上げた。