恋日和 〜キミに届かない恋でも〜
「……ココア、好き?」
うつむいて涙を流していると、そんな声が聞こえて顔を上げる。
にじんだ視界のさきには、知らない男の子が立っていて、ココアの缶を私に差し出していた。
「……えっと、」
だれなんだろう。
涙を拭って男の子のことを見てみるけど、やっぱりわからない。
「あげる」
「あ、ありがとう……」
だけど彼の着てる制服には見覚えがあった。
その学ランは、たしか隣の中学のやつだったはず。
彼から受け取ったココアは、冷たいゆびさきと心をじんわりと温めていく。
「座ってもいい?」
そんな言葉にコクンとうなずくと、男の子は私の隣に腰をかけた。
男の子はなにも話さずに、缶のプルタブを開けてごくっとココアを飲んでいる。
どうしよう。
私、男の子と話すのは苦手だし……。