恋日和 〜キミに届かない恋でも〜
告白じゃないけど、『好き』って言ったから恥ずかしくなって頬が熱い。
「……あたし、入学式よりももっとまえに、三吉くんと会ってるんだよ」
だから話をはぐらかそうとして、そうつぶやいた。
話したことは、一度だけ。
あとは見つめていただけだった。
ーーまだちゃんと、〝恋〟とは言えない、小さな気持ちを抱いていたころ。
「一度だけ話したことあるんだよ。 ほら、数学の参考書がどれがいいか教えてくれた」
「あれは、希子だったんだ。覚えてる」
三吉くんの言葉が、少しうれしかった。
覚えてくれてるなんて、思ってもなかったんだ。