恋日和 〜キミに届かない恋でも〜
「急に話しかけてごめん。 でも、泣いてたから無視できなくて」
「あ、ありがとう」
ただ話すだけなのに、声がうわずる。
横目で男の子のことを見ると、彼は優しい顔で笑っていた。
その笑顔に、もっと心が温かくなるような感じがする。
「東中だよね? 俺は西中」
「そうなんだ……」
「3年?」
うなずくと、男の子は『俺も』と言ってまた笑った。
うまい相づちができなくて、申し訳なくなる。
希子だったら、もっともっとうまく話せるんだろうなあ……。
「俺は、三吉朝陽(みよしあさひ)。 名前は?」
「私は、芹沢……キコ」
「キコ? いい名前」
その笑顔を見て、胸が少し痛んだ。
どうして、『キコ』って口から出ちゃったんだろう。
その理由はわかってるくせに、認めたくなかった。