恋日和 〜キミに届かない恋でも〜



だから、さっきの莉子の姿は見なかったことにしよう。


それにしても、やっぱり三吉くんがどんな人なのか気になる。



莉子はいつも〝温かくて優しい人〟って言うから、なんとなくイメージはできてる。
だけど、やっぱり見たいな。



「ねえ、希子」

「ん?」

「希子はもうあの男の子を見てないの?」



その言葉に、図書館の陽だまりのすみっこの、空いた席を思い出す。
その席を気にしないようにしても、やっぱり寂しくなる。



「もう、きっと会えないと思う」

「そっか……」



でも、〝あのとき話しかけなかったから〟とかって、後悔はしない。
……したくない。


病室に、ふたりの間に、シーンとした空気が流れる。


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