恋日和 〜キミに届かない恋でも〜
* * *





昨日の病院の帰りの車中も、莉子のいない家でも。
お母さんはとくになにも言わなかった。


だから、嫌な予感は予感にすぎなかったんだって、そう思いたい。



リビングから見える窓の外の空も、もやもやの曇空とかじゃなくて、やっぱり晴れだった。



「希子、遅刻するわよ」

「うん」



昨日、あんなに悲しそうな顔をしていたお母さんも、今朝はいつもどおりに見える。


だからきっと、莉子はただの貧血。
……そういうことなんだよね?



口のなかにあるパンを、コーヒーで飲み干す。
朝ごはんを食べ終えると、洗面所に行って歯磨きと身だしなみを整える。



いつもどおりの朝。
だけど少し寂しい朝。

だけどいつもどおりに見えるお母さんも、やっぱりどこかよそよそしくて。



なんて、気にしすぎなのかな。


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