恋日和 〜キミに届かない恋でも〜



「希子がそんなんでどうすんだよ」

「……ごめん」



〝いつもどおり〟に違和感を抱く理由がわかった。
莉子の入院以外はなにもかもいつもどおりなんだ。


だけど、あたしだけがいつもどおりじゃない。
だからきっと、変な感じがしたんだ。


……たぶん、そうだ。



「希子」



心配そうに声をかけてくれる春馬に、にっと笑顔を見せる。



「そうだよね! いつもどおりにする!」

「おう」



話すたびに白い息がふわっと出ては消える、そんな冬の朝。

〝いつもどおり〟に戻すように、たくさん笑ってみせる。


夕焼けの次の日はちゃんと晴れた。
嫌な予感もただの予感だった。



だから明日の朝はきっと、あたしの左側を莉子がいつもどおり歩いている。




< 89 / 309 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop