恋日和 〜キミに届かない恋でも〜
ほらやっぱり。
これからきっと嫌なことが起きるんだ。
それが悔しくて、悲しくて。
ただ、目から涙が溢れて。
そんな私を見て、お母さんはさらに泣き出した。
どうして私は、大切な人を笑顔にすることができなくて、むしろ笑顔を奪っちゃうのかな。
泣かないで。
心配そうな顔しないで。
私はただ、笑ってほしい。
でもそれが1番、むずかしい。
「お母さん。 泣かないで」
「ごめんね、莉子……」
「お母さん」
「ごめんなさい……っ」
それ以上泣かないで。
なんて言いたいけど、悲しませてるのは私なんだ。
病室に、ただお母さんと私のすすり泣く音が響く。
それを聞いて、また涙が溢れる。
———せめて、彼だけは。
三吉くんの笑顔だけは奪いたくないな。
やっぱり、『希子』と名乗って正解だったのかな……。