奇跡の歌姫【下】
「けーちゃん、変わらずイケメンさんだね。」
「それでも、和樹の方がかっこいいけど。でしょ?」
それに、照れ笑いを返した。
それが、昔ずっと交わしていた挨拶みたいなものだった。
お兄ちゃんとけーちゃんと、3人でいつも一緒に遊んだ。
私にとってけーちゃんは、第2のお兄ちゃんみたいな存在。
「時間、すぐに取れなくてごめんね?ここだけの話だけど、僕今あの2人組のマネージャーしててさ。」
そう言って、向かいの有名チェーン店のポスターを指差した。
「…私、あんまり詳しくなくて。」
「えー、珍しい。でも、芸能界に入るならこれからはちゃんと覚えないといけないよ?」
それに頷いた。