レイアップ
あっという間に花火が終わり、ぞろぞろと人の群が一斉に動きした。夜空には、消えた光りの余韻と、夏の終わりをほのめかす寂しさとが混じりあい、それはどことなく映画のエンドロールが流れる時間に似ている気がした。
一度席を立った観客は二度とスクリーンを見ること無く足早に去っていく。おれは一度もユキと映画館に行ったことはないけど、ユキはエンドロールが終わる最後まで席を離れないタイプなんだなと思った。
ユキはじっと夜空を見つめ、大輪の裏側に隠れていた星たちがいつものささやかな輝きを放ち始めた頃にようやくいった。
「終わったね・・・」
「ああ、終わったな」
多分これでユキと一緒に花火を見る日はもう二度と来ないだろう。才色兼備でウィークポイントも一切もたない幼馴染みの隣にいるのはこの辺が限界だ。
昔誰かが言っていた。
この世には才能がある者だけにしか与えられない道がある。ごく限られた人間にしか歩くことの許されないその道を、きっとユキはスタスタ歩いて行くのだろう。方向違いの道を歩く二人が手を繋ぐことは不可能だ。