レイアップ
「そろそろ帰ろう」
おれは、まだ空を見上げるユキの横顔にいった。するとユキはクスッと笑っておれに顔を向けた。
「いつも帰ろうっていいだすのはシュウイチが先だったよね。小学生の頃、放課後みんなで学校に残って遊んでる時も、シュウイチが帰ろうって言い出すまでは誰も帰らなかったし・・・」
「そうだっけ?」
「うん。だけど、突然シュウヤがミニバス始めて、気が付いたらシュウイチはずっと一人体育館に残って練習するようになってた。私たちが遊び疲れて帰った後もずっと・・・」
「そうだっけ・・・・」
胸が痛かった。ユキはずっと見ていてくれたんだ。おれの知らないおれの思い出、忘れてしまった昔の自分も、ユキは覚えてくれている。なのに、おれは一体ユキの何を見てきたのだろう。おれ以上におれを知る存在に、おれは罪悪感を感じずにはいられなかった。
「あの時・・・、もしも呆れて先に帰るシュウイチを止めていたら何か変わってたのかな?あの時、私もシュウイチと一緒に帰ってたら今とは違う今があったのかな?」
ユキはまたおれの知らない時間を話はじめた。
「あの時って?」