レイアップ


「覚えてない?あの日は放課後みんなで図工室に隠れてトランプで遊んでた。でも途中で飽きてきて、今度はウノでもしようかってなった時、とうとうシュウイチが呆れて先に帰っちゃったんだよ」

「そんな事よく覚えてるな」

全く記憶にない思い出だった。そんなのどこにでもあるありふれた小学生の日常に思える。しかし、ユキにとっては違うようだ。

「覚えてるに決まってるじゃない。だって・・・」

「だって?」

「だってあの日が最後だったから・・・。幼馴染みの桐山秀一を見たのは」

ユキの顔が寂しげに見えたその時、フラッシュバックした頭の中で忘れていた記憶がつながった。ユキのいっているあの日とは、おれが夢に見たあの日と一緒だった。

おれが、叔父に体育館に引きずり込まれたあの日、おれは今と同じ顔をしたユキを見た。

あの時、何故いつも一緒に帰っているユキを置いて教室を出たのかは覚えていない。ただ寂しげなユキの顔が今のユキにぴったりと重なる。

『もう帰っちゃうの?』

ユキは多分そういったと思う。でも、おれは何もいわずにランドセルを背負って教室を出たんだ。



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