レイアップ
「思い出した。おれがミニバスに入った日だ」
ユキは、こくんと細い顎を下に向け頷いた。
「初めは全然信じられなかったな。シュウイチがバスケだなんて。どうせすぐ根をあげて辞めるだろうって思ってたから」
ユキのいっていることは正しかった。おれは笑って返した。
「おれもそう思ってたよ」
「でも違った。シュウイチは本気だった。私こっそり放課後体育館を覗きに行った事があるんだよ。そしたら、そこにいたのはもう、私の知ってるシュウイチじゃなかった」
ユキがそんなことまでしていたなんて以外だった。今まで練習はおろか、試合ですらユキの姿を見た覚えはない。その時のユキの目におれはどう映っていたのだろう。おれがその答えを聞く前にユキはいった。
「その瞬間思ったんだ。悔しいって」
「悔しい?」
おれは思わず聞き返していた。ユキが悔しがる理由なんて何処にもないはずだ。野球と違ってバスケは女の子でもできる。ユキがもしバスケをしたかったのなら始めればいい話だ。おれは続けてユキに聞いた。
「ユキもバスケやりたかったのか?」