レイアップ
「汗だくになって、肩で息して、声が枯れるまで叫んで、そんなシュウイチの姿を見て思ったんだ。シュウイチは私にはないものを見つけたんだなって。それがすごく羨ましくて・・・」
おそれ多い話だった。
「ユキが羨ましがることなんてないだろ。おれはただミニバスに入っただけだ」
「ただ入っただけじゃないでしょ。ただバスケやってるだけなら私はシュウイチのこと好きになんてならなかった」
ユキの頬がかすかに赤らんだ。ごまかすようにユキは続ける。
「あんなにがむしゃらになれるものなんてそうそう見つからないよ。私にもそういうなにかが欲しかった」
「ユキだって空手やってただろ。毎日休まず練習してたじゃないか」
「それは、シュウイチに早く追い付きたかったから」
ユキは淡々と話した。だが、段々と声の力は抜けていく。氷が溶けだすかのように、冷さと鋭さがユキから消えていく気がした。