レイアップ
次の瞬間、おれの目の前に広がったのは、見覚えのある体育館の光景だった。
おれはセンターサークルに突っ立って、綺麗に再現された自分の記憶をぐるりと眺めた。スコアボードの得点は28-32。試合は第2Qの序盤だろうか。ベンチには、いつもより早く出番が回ってきたおれが、アップをしながら交替を待っている。
まったく趣味の悪いガキ。こんなものを見せなくたって、この試合だけはしっかりと覚えている。
一年前の県大会準々決勝。おれの中学校生活最後にして最悪の試合。
「よし!桐山いってこい」
審判の笛の音と共に、ベンチで監督が勢いよく声を上げた。おれは、ろくに返事もせずにベンチで一礼してからコートに入る。
『やめろ!』
おれは、おれに向かって思わず声を上げた。こんな試合に出る価値なんてない。この試合がなければおれは今頃・・・。
夢だとわかっていてもなんとかしたかった。おれは必死で、一年前の自分を止めようと自分に駆け寄ったが、いくら叫んでも、おれの声は誰一人して届かない。ユニフォームを着たおれは、おれの身体をすり抜け、自信に満ち溢れた顔でディフェンスの位置についた。