レイアップ
どうでもいい試合だった。なんてことない試合のはずだった。
試合の相手は、毎年全国常連の強豪中学。
いくらおれが頑張ったところで、まず勝てる相手ではなかった。現にうちの中学は毎年この強豪チームと当たり、一回も勝った試しがない。
しかし、この年はいつもと少し様子が違っていた。
どういう訳か、いつも三回戦あたりで敗けるうちのチームが、運の良いトーナメントの巡り合わせで、準々決勝まで勝ち進んだのだ。しかも、強豪相手に意外にも接戦を繰り広げている。
おれの中で何かがぐらついたのはその時だった。
この時既に、おれは東高の推薦が決まっていた。正直おれにとって中学最後の夏の大会なんて消化試合に過ぎなかった。シックスマンも今日が最後だ。そう思っていたのに・・・。
『勝ちたかった?』
いつの間にか少年がおれの後ろに立っていた。
「こんなものを見せてどうしたいんだ」
『勝ちたかったんでしょ?チームの勝ち負けなんてどうでも良かったくせに、たまたま運良く準々決勝まで進めたからって・・・』
「黙れ!」
少年がいい終わる前におれは叫んでいた。