レイアップ
ミウは飛ぶように走る女だった。まるで背中に翼が生えてるみたいにスイスイと走る。
こんなに違和感なくドリブルをする女を、おれは今まで見たことがなかった。
一旦、床に叩きつけられたボールは、吸い付くように手に戻り。切り返しもやけにスムーズだ。
そして、もっと驚いたのは、ミウのシュートフォームがワンハンドだったこと。
普通、男に比べ、どうしても筋力が劣るため、大抵はダブルハンド、いわゆる女打ち、が一般的だが、ミウは違っていた。
男と同じワンハンドで、しかも、3Pラインから軽々とシュートを放つ。ボールは逆回転しながら綺麗な弧を描き、スポッとリングに吸い込まれた。
「どう、結構やるでしょ」
そういいながら、ミウは一人でコートの中を得意気に飛び回った。
確かに、おれからみても、かなりセンスは良かったが、そんなことより、ミウが跳び跳ねるたびにヒラヒラと舞うスカートから、目を反らすのに必死だった。
おれは、壁に腰かけて床に座り込み、思春期がもたらす邪心を振り払うため、目をつむった。バッシュの擦れる音とダムダムと響くボールの音がひどく懐かしい。