レイアップ
異変に気づいたのは第3Qが始まって数分が過ぎた頃だった。試合は14点のビハインドのまま、ゆっくりと進んでいた。
おれはスコアボードを見ながら、開きも縮まりもしない点差に焦りを感じていた。
既に王者の風格を取り戻しつつある敵チームに対し、我がチームは覚醒した相手に押され、つまらないミスの連続。14点差で収まっているのが不思議なくらいだ。
このままだと次期に点差は一気に開く。取り返しのつかない時間になる前になんとかしなければいけない。
おれは、ろくにボールも運べずにいるPGに向かって叫んだ。
「いつまでボール持ってんだ!さっさとパス出せよ」
しかし、PGはおれの方をチラリと一別すると、明らかに無理な体勢からそのままシュートを放った。それは、いくら下手くそなPGでもしないあり得ない判断だった。
なんとかディフェンスを振り切って、確実にパスが通る状態だったおれを無視した3P。どう考えてもパスをつないで確実に一本をとらないといけない場面なのに、あろうことかボールはリングにかすりもせず、情けない放物線を描いてコートに落ちていく。
(はぁ?エアボール!?)