レイアップ
一瞬、頭にハテナとビックリマークが20個くらい連続でフラッシュバックしたあと、ベンチから監督の叫び声が聞こえた。
「戻れ!ディフェンス!」
ゴール下にはエアボールをそのままリバウドした敵のセンターが、今にもロングパスを出そうと腕を降り被っていた。
ボールは弾丸のような速さでコートを切り裂く(ここで速攻されるとヤバい)。
おれは全力でボールに飛び付いた。なんとか伸ばした右手の中指が、かすかにパスコースのラインに触れる。今の状況では最善のパスカット。おれの中指にかすってコースのズレたボールは、運良くコートの外に出てくれた。
見かねた監督がベンチで立ち上がりタイムアウトのコールをする。
「お前らなにやってんだ。いつまでも相手のペースに合わせてないで、自分たちのバスケをしろ。このままテンパってるとこの試合持ってかれるぞ」