レイアップ
テンパってるのはアンタだろ。おれは思わず声に出しそうになったが、ぐっと言葉を飲み込んだ。
コートの中で起こっている異変に気づかず、青筋を立てながらキレまくっている短気でバカな監督に心底嫌気がさしたが、おれは冷静に現状を把握する為、静かにベンチに座る他のメンバーの顔を横目で見ていた。
いったいなんなんだ。こんなところで仲間に足を引っ張られてる場合じゃないのに。上から監督の内容の薄い指示が降ってくる中、おれはキャプテンの大島と目が合った。
大島は一瞬、口元だけニヤリと笑うと、おれから目を剃らした。なんだか胃の辺りがざわめきたつ。不穏な空気が立ち込めるベンチで、おれは今一つ現状を掴めきれないまま、タイムアウトはあっさり終わってしまった。
「よし!まずはディフェンスしっかりガンバって一本決めてこい」
監督が手を叩きながらおれたちをコートへ送り出した時だった。ベンチでふてくされている山里に、大島が声を掛けた。