レイアップ
「もうちょっと待ってろよ。すぐにお前の出番になるから」
そういって大島はまたおれを見た。今度はなんの表情も無いまま、しっかりとおれを凝視する。
「なんだよ。なにかいいたいことでもあるのか」
「別に」
先にコートに入っていく大島の背中を、一年前の自分は睨めつけるように見つめていた。
(そろそろだな)。
おれは下っ腹のあたりがジリジリと熱くなっているのを感じて、グッと全身に力をいれた。この後起きる出来事に備え、目を逸らさぬよう歯をくいしばる。
といっても、あくまで夢の中の話だけど、たとえ夢であろうと、ぼんやり眺めるだけの余裕はおれには無かった。おれはまだ、このシーンを自分自身ではっきりと整理できずにいる。
今まで何度冷静に思い起こしても、頭の中がグチャグチになり、急に叫びたくなるような怒りが込み上げてくるだけだ。
ただ一つだけはっきりと覚えているのは、このタイムアウトを境に自分が“空気"になった感覚だけだ。