レイアップ
予兆はさっきのPGのエアボール。いや、本当はもっと前から予兆はあったのかもしれない。もしかしたら、この試合のずっと前から仕組まれていた作戦。誰の仕業かはすぐに分かった。キャプテンの大島。おれは奴の手によってまんまとコートの中から消された。
おれの後ろを、おれの横を、おれの目の前を激しくボールが飛びかう。しかし、そのボールがおれにパスされることは一切なかった。おれが必死でデフェンスを振り切っても、奴らにおれの姿は見えていない。おれがどんなに声を上げても、奴らにおれの声は届いていない。あからさまだった。
おれは空気になったんだ。
ベンチであれだけうるさく叫んでいた監督は、頭を抱え肩を落とした。第3Q残り2分。得点差は24点にまで開いていた。
監督が、ベンチでニヤニヤとその光景を楽しそうに眺めている山里に声を掛ける。交替か。おれがそう悟った時、3Pラインでボールを持ったケイトが、おれにポツリといった。
「残念デス」
ケイトがシュートモーションに入りおれは反射的に反応してしまった。ブロックしようと伸ばした手が、ケイトの腕にペチンと間抜けな音をして当たる。