レイアップ
そして、夏休みが終わり、謹慎が解けたころには、おれの周りの環境は一変していた。女の子たちの熱い視線はすっかり消えて、目が合えば慌てて視線をそらし、隣にいる友達とひそひそと話しながら遠ざかっていく。いつも気軽に話しかけてきた教師たちも、どこかよそよそしく、必要以上におれに近づこうとはしなかった。代わりに、今まで関わりの無かった不良たちからは絶賛の人気者だ。噂が噂を呼び、おれは卒業するまでの短い間に10人もの腕自慢から挑戦状を叩きつけられた。戦歴は5勝4敗1引分。
顔の痣が一つ増えるたびに、なぜか、ガラの悪い友達の数が少しずつ増えていった。気がつけば、おれはそのお友達と一緒に、押し込められるように西高に入れられていた。
「・・・バカだな、おれ」
夢の中の体育館は、すっかり静かになっていた。再生する記憶が尽きた体育館に一人ぽつんと取り残される。そろそろ、少年がおれを奈落へ落としにくるころだろうか。
「ホ~ント、バカだよねー」