レイアップ


突然、聞き覚えのある声がして、おれは後ろを振り返った。またさっき見たあのバグだ。

「なんでミウが出てくるんだよ」

「別にいいでしょ、夢なんだから。それにしてもなんで殴っちゃうかな~」

ミウは頭を抱えながら、ため息をついた。ユキのことといい、人の夢にまで出てきて、なんてお節介なやつ。

「殴っちゃったんだからしかたないだろ。おれだってこんな夢見せられても、よく分からないんだ」

「ふ~ん。わたしはなんとなく分かるけどな」

ミウの眉がぴくっと上がって、ちょっとだけ目に力が入った。

「で、このままでイイわけ?」

「何がだよ?」

こんどは眉間にしわがよって、明らかにイラついた顔になる。

「これで終わりでいいのかって聞いてるの。ホントはバスケ続けたいと思ってるんじゃないの。負けっぱなしで悔しくないの」

残念そうにおれを見つめるハーフのイケメンが頭に浮かんだ。やつを最後に見たのは、おれが最後に本屋で立ち読みした月刊バスケットボールの1ページ、全中出場校特集でのひとコマだった。今大会注目選手、八柴ケイト。県大会MVPの実力でチームを優勝へと導く、と写真つきで書かれていたのだ。
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