レイアップ
おれは、ため息のような深呼吸を一回していった。
「ユキの話が本当なら、ミウの目的はなんなんだ」
ユキは首を小さく横に振った。
「さあ、私にもわからない。でもミウは私よりシュウイチに用事があったんじゃないかな」
「おれに?」
「そう。私にはメールだけなのに、シュウイチは夏休みの間中ずっとこの体育館で一緒だったんでしょ」
流石はユキだった。もうすっかり状況を把握している。
「ねえ、ひとつだけ聞いていい?」
おれは顎の先で軽く頷いた。
「昨日の花火大会、本当はミウと行くつもりだったんでしょ」
これ以上ウソをついても仕方なかった。おれはまた顎の先で、さっきより少し深く頷いた。
「そっか・・・」
ユキの目にはなんの感情も映ってはいなかった。そのままゆっくりと体育館の出口に向かう。
「おい、ユキ・・・」
呼び止めようとしたおれにユキがいった。
「もし、もう一度ミウに会えたらいっておいて。親友の私にも顔ぐらい見せなさいよって」
ユキは笑っていた。緑の鉄扉がガタンと閉まり、おれはまた体育館でひとりぼっちになった。