レイアップ


それから3日がたった。ユキのいった通り、ミウは忽然と姿を消した。電話をかけることも、メールを送信することもできない。こんな形の勝ち逃げなんて納得がいかなかった。

体育館の外は久しぶりの雨。おれはセンターサークルに寝そべって、天井に打ち付ける雨音を聞きながら、ミウが現れるのを待った。

ただミウと出会う前に戻っただけなのに、ひとりぼっちの体育館は、ピースの欠けたパズルのように欠落した空間だった。どこを見渡しても人間一個分の空白が埋まらない。しかし、その静まり返った体育館に寂しさは感じなかった。それは寂しさよりも苛立ちのほうが強かったから。今すぐミウに会って文句をいってやりたい。

「勝手すぎるぞ、馬鹿野郎」

天井に向かって小さく呟いた。その時、ガスッという音がして頭になにかがぶつかった。

「女の子に向かってバカヤローはないでしょ」

聞き覚えのある声。頭にぶつけられたバスケットボールがコロコロと床を転がる。そのボールをミウはさっと拾い上げた。

「ネタバレしちゃったみたいだネ」

イタズラがバレた少年のような顔をしてミウは笑った。



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