レイアップ


「私がバスケットボールをするとお母さんは喜んでくれた。シュートを決めると褒めてくれた。小学校に入ると当然のようにミニバスに入って、試合で私が活躍すると、さすが私の子供だって得意気に笑う。現役時代の自分にそっくりだって。そんなお母さんの顔を見るのが私は好きだった」

ミウの目には哀しいくらい綺麗な光が宿っていた。遥か遠くにある何かを見つめている。
おれとミウとの境遇はどこか似ていた。おれは叔父、ミウは母親、お互い初めてバスケを教わった相手は、血の繋がった元バスケットボールプレーヤーだ。

しかし、指導者としての素質は、断絶ミウの母親の方が上だ。おそらく、ミウが自然とバスケに馴染んでいくように、幼い頃から周到に育て上げたのだろう。いきなり体育館に引きずり込まれるのとは雲泥の差だ。なにより、あの叔父の喜ぶ顔が見たいんて、おれはこれっぽっちも思ったことはない。

「それからバスケは私の全てになった。バスケが私に全てをくれた。友達も、仲間も、居場所も、充実感も。何もかもが完璧で、自分の人生は、このままずっと巧く進んでいくんだと思った。子供ながらにそんな確信があった。でもね・・・・・」


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