レイアップ
「それって二次関数より難しい問題?」
ミウは笑いながらしっかり頷いた。
「シュウの言葉を聞いて私は分からなくなった。なんでこんなに腹が立つのか。初めて会った人をあんなにハッキリ嫌いだと思うことなんてなかった。もうバスケに未練なんてないはずなのに、ずっとシュウの一言が頭を離れなかった」
「それで、答えは出たのか?」
「すぐには出なかった。だから、私はそれから何度もシュウの試合を観にいったの」
おれの声は思わず大きくなった。
「何度も?」
ミウは少し恥ずかしそうに、おれから目を逸らしていった。
「別に全試合ってわけじゃないよ。県予選の会場は家から近い所にあったし、練習試合もあれから何度かうちの学校でやってたし・・・」
ということは、ほとんどといっていいほどの試合で、ミウは観客席の何処かにいたんじゃないか。そう考えたとき、おれはふと思った。それじゃあ、もしかして“あの試合の時も”、ミウは観ていたんじゃないだろうか。
夢の中で観客席にいたミウは、実在していたのかもしれない。おれの額には、いつの間にか冷たい汗がにじみ出ていた。