レイアップ
別に、おれのカンが鈍っていたわけじゃない。鈍っていたのは、おれの体の方。頭では分かっていても、足がいうことをきいてくれない。一年間でなまりきったおれの体は、どうしても頭から送られた信号をワンテンポ遅れてキャッチしてしまう。
それに、最も決定的なのは、相手の力量を測る力だった。
おれの予想を遥かに越え、ミウの実力はかなりのレベル・・・いや、かなりではない。異様ともいえるあのスピード、瞬発力・・・。
普通の女子高生にあんな素早い動きができるものなのだろうか。
一瞬、目の前から消えた様に錯覚させるドライブ。
おれは、自分の全身に鳥肌が立っていることにようやく気付いた。
何だこいつ・・・。
おれの戸惑いをしってかしらずか、ミウはさっさとおれにボールを渡し、ディフェンスの姿勢をとる。
「いいのかよ。そんな腰だかディフェンスで」
ミウは軽く両手と両足を広げ、おれが攻めてくるのを待っていた。最もそれ以上腰を落とされても、スカートから伸びる太ももが気になって、全然集中できないのだけれど。
「かかってきなさい」
ミウは人差し指を突き立てて、ニヤツキながらおれを挑発する。
コノヤロウ。