レイアップ
「なめんじゃねえぞ」
ボールを持つ手に力が入る。本気にならざるをえなかった。えらくリングが遠く感じる。そんな時の相手は大抵強者だ。
一呼吸おいてから、一気にミウのふところに突っ込んだ。ミウはしっかりと進行方向を塞ぐようにディフェンスする。おれは、くるりと背中を反転させ逆サイドに方向を切り替えた。しかし、それでもまだミウをふりきることができない。
姿勢を低くし、滑空する鳥のように更に加速した。
ミウも負けじとおれにピッタリくっつき速度をあげる。
今だ。
おれは、マックスまで加速したドリブルをビタッと止めて、リングから遠ざかるように斜め後ろにジャンプした。既に、ボールは頭の上に構えられている。
ドライブからのフェイドアウェイ。これで、今まで何本ものシュートをリングに沈めてきた。
デフェンスはドリブルにつられ、体が流れてしまい相手のシュートを止めることができない。仮に反応出来たとしても、後ろに飛びながらのジャンプシュートをブロックするのは至難の技だ。身長差があればなおさらの話。
ミウの身長は甘く見積っても自分より15センチ以上は低い。勝負あった。
おれは、思わず口元に笑みを浮かべた。