レイアップ

「私に勝ったら教えてあげる。そういう約束でしょ?」

確かにその通りだ。ワンゴールさえ決められなかったおれに、質問権は何一つない。

「そういえば、ミウが勝ったときの条件決めてなかったな」

そういうと、ミウはにんまりとイヤらしい笑みを浮かべておれを見た。しまった。思わず余計なことを口走った自分に後悔する。天使が見せる恐ろしい悪魔の微笑み。

「どーしよっかなー。なにしてもらおっかなー。美味しいご飯でもおごってもらおっかなー。やっぱりおごってもらうなら焼き肉とかがいいよね。あ、でも夏だからウナギかな。お寿司も捨てがたいよねー・・・」

本気でいってるのかこの女。おれは、自分のサイフの中身を想像して、顔がひきつった。さっき新しいバッシュを買ったばかりで、ただでさえ少ないおれのこづかいは、残りわずかになっていた。これ以上の出費は貧乏学生にとって死活問題だ。

「なんでバスケに負けたくらいで、おれがそこまでしなけゃなんないんだよ」

「だって、負けたときの条件決めなかったそっちが悪いんでしょ。自分は絶対負けるはずないと思ってたシュウが迂濶なの」

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