レイアップ
返す言葉もなかった。負けたときのリスクも考えずに賭けをしたオレが間抜けだったのだ。だが、いくら何でも、ここでサイフの中身を全てかっさらわれる訳にもいかない。
あんまりセコい男と思われたくはないんだけど、おれは、ある提案を思いついた。ねえ、マックのバリューセットでどう?シェイクもつけるから。
「ねえ、じゃあひとつだけ聞いていいかな?」
おれは、喉まで出かかったセコいセリフをギリギリで飲み込んだ。
「なに?何でも聞いてくれ」
なんとか自分の面子を保てそうでホッとする。
「なんでバスケやめたの?」
また、おれは何も返せなかった。それは、あまりにもミウの目が真剣すぎて、目を反らすこともできず、ただただ、ミウの顔を見ていることしか出来なかったから。
だんだん、胸の辺りが苦しくなって、自分が息をするのも忘れていることに気がついた。それでもまだ、おれの口から言葉は出てこない。
「別に、嫌なら無理していわなくていいよ」
さっきまでの真剣な目つきが嘘のように、信じられないくらい優しい目で、ミウはふっと笑った。