レイアップ
こんな優しい目をする人間を見るのはいつ以来だろう。
おれは無意識に、昔好きだった小学校の担任の先生を思い出していた。
あのときの先生の顔も、確かこんな優しい目をしていた。
「桐山くんは、本当にバスケ好きなんだね」
そういって先生は優しく笑ってくれたんだ。
それは、おれがまだバスケを初めて間もない頃、なかなか試合に出してもらえず、悔しくて一人放課後の体育館で練習していたときのことだった。
おれは、目に涙を浮かべながらがむしゃらにシュートを打っていた。目の前がゆらゆら揺れて、ボールはリングにカスることもなくコートに落ちる。
そんなおれを見ながら、その日、先生は最後まで練習に付き合ってくれた。
遠くの片隅に忘れ去られた昔の記憶。今とはまるで別人の自分。
何だかひどく懐かしくて、胸のあたりが締め付けられる様にギュッと痛んだ。