レイアップ
インターハイ出場経験があるとかで、ちんけなプライドをもっているうちの監督は、練習試合でさえ敗けを許さない奴だった。
だからどうしても、しぶしぶおれを出すはめになる。

「おい、桐山いってこい。ちゃんとおれの作戦どおりに動くんだぞ」

不機嫌な顔の元インターハイ出場選手。

おれは、「うぃーす」と気だるい返事をしてコートの中に入る。

もちろん作戦どおりになんか動かない。好き放題コートを暴れまわって、あっさり逆転勝利を飾るのだ。ついでに得点王のおまけ付き。

もちろん監督はカンカンだが、おれのおかげで勝ったんだから文句は言わせない。

いつも偉そうに先輩面している奴らも試合になると静かになった。
補欠の、しかも生意気な後輩に、美味しいところを全てかっさらわれるのだ。おまけに、試合の半分ほどしか出ていない奴に得点王までもっていかれて。

それも毎回毎回。

そう考えると、「シックスマン」というポジションも悪いものではなかった。

こんな優越感は他にない。


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