レイアップ
「久しぶりにどうだ?一勝負してみないか」
「やめとく」
おれは、さっさと受け取ったボールを投げ返した。
体育館とは違うゴム質の地面にテイン、と間抜けな音を響かせ、ワンバウンドしたボールは奴に返っていく。
「そうか。まだおれには勝てんか・・・」
ニヤニヤ笑う奴の顔を無視して、おれは背を向けた。だが、その瞬間、頭部に重い衝撃を受けた。今度はオレの頭のなかでテイン、と音が鳴る。
「いてえな、何すんだよ」
「誰が帰っていいといったんだこのバカタレ」
バカはあんただ。そう言い返そうとしたがやめた。
平気で背後からバスケットボールを投げつける様な奴に、これ以上関わりたくない。
「常識」という言葉を知らないこの大人が、何故ミニバスの監督を務められているのかは永遠の謎だ。
「あんたと遊んでる暇なんかないんだ。先約があるからな」
「先約?」
「あんたには関係ないよ」
「お前にとって一番の先約はおれだろうが」
急に元監督の声色が変わった。おっかない。カタギにしておくにはもったいないくらいの負のオーラ。
本当にカタギかどうかは微妙だけど・・・。