レイアップ

「どういう意味だよ?」

食いついたな。奴の顔がそういった。まんまと獲物がかかったといわんばかりに、にんまりと笑みを浮かべる。奴の左腕の龍が大きく口を開けてこっちを見ていた。


「お前には義務がある」

唐突に奴はいった。


「義務?」


「そう、お前は約束を破った。だからお前はおれに従う義務がある」


『約束』・・・。

確かにおれは、この男とある『約束』を交わしていた。いや、正確には、ある条件を突きつけられたといった方が正しいかもしれない。

「あんたに一回でも勝ったらバスケを辞めていい」

それは、おれが勝手に切った鎖。


「そうだ。良く覚えてるじゃねえか」


そう、あの日強制的にチームに入れられ、強制的におれはこの約束をさせられた。

初めてバスケットボールを触ったあの頃、おれはバスケを辞めるためにバスケをしていた。

鎖で繋がれた犬みたいに、必死で首輪を外そうとしていた。

でも、今は違う。

「でも、おれはもう、あんたの飼い犬じゃない。あんたのいいなりにはならない」


「飼い犬じゃない?だが野良犬でもないだろ」

奴は鼻で笑ながらいった。

< 45 / 194 >

この作品をシェア

pagetop