レイアップ
「どういう意味だよ?」
食いついたな。奴の顔がそういった。まんまと獲物がかかったといわんばかりに、にんまりと笑みを浮かべる。奴の左腕の龍が大きく口を開けてこっちを見ていた。
「お前には義務がある」
唐突に奴はいった。
「義務?」
「そう、お前は約束を破った。だからお前はおれに従う義務がある」
『約束』・・・。
確かにおれは、この男とある『約束』を交わしていた。いや、正確には、ある条件を突きつけられたといった方が正しいかもしれない。
「あんたに一回でも勝ったらバスケを辞めていい」
それは、おれが勝手に切った鎖。
「そうだ。良く覚えてるじゃねえか」
そう、あの日強制的にチームに入れられ、強制的におれはこの約束をさせられた。
初めてバスケットボールを触ったあの頃、おれはバスケを辞めるためにバスケをしていた。
鎖で繋がれた犬みたいに、必死で首輪を外そうとしていた。
でも、今は違う。
「でも、おれはもう、あんたの飼い犬じゃない。あんたのいいなりにはならない」
「飼い犬じゃない?だが野良犬でもないだろ」
奴は鼻で笑ながらいった。