レイアップ
「部活のない高校へ行き、髪も染め、いっちょまえに意気がっているつもりかもしれんが、結局こんなところに来て未練を断ち切れずにいる。鎖を食いちぎって逃げたはいいが、行くあてもなく自分の犬小屋の回りをうろついている飼い犬と一緒なんだよお前は」

これ以上の言い争いは不毛だった。このまま、平常心で話を続ける自信もない。イライラはピークに達して頭は沸騰しかけている。


「もういいわかった」


1ゲームだけだ。おれは自分に言い聞かせた。

こうやって、結局いつも叔父さんのペースに乗せられてしまうのだ。


ビルの隙間から強く風が吹き抜ける。鎖で出来たリングのネットがチャラチャラと揺れていた。


「さてと・・・」

頭を振って首の骨を鳴らしながら奴がいった。


「出来のワルい教え子が、どんだけ成長したか楽しみだな」


「出来がワルいかどうかすぐ分からせてやるよ」

とっくに時効だと思っていた約束だけど、これで本当に終わりに出来る。

体のどこかに刺さっていた小さなトゲ。

別に痛くて動けない訳じゃない。苦しくて息が出来ない訳でもない。

それでも、ふと胸のあたりがチクチク疼くのは、いい加減不愉快だった。
< 46 / 194 >

この作品をシェア

pagetop