レイアップ


そんなことは分かっている。おれの中にあるバスケに必要な基礎的な動きは、全部あんたから叩きこまれたんだ。


ギリギリの所で、素早くボールを股に通す。会心のレッグスルー。
奴の体は完全に前のめり。そのまま左足を軸にしてターンに繋げる。一瞬、互いに背中合わせになったとき、二つの空気の流れが交差した。


次に前を向いたとき、おれの目の前にリングだけが視界に入ればおれの勝ちだ。

「そんなもんか・・・」


ボソッと声が聞こえた。
思わず舌打ちが出る。

マジかよこのオッサン。

息一つ切らさず余裕の笑み。こんな奴に本気で勝とうとしていたあの頃の自分がバカみたいだ。

オフェンスはセンスでどうにかなっても、デフェンスはそうはいかない。守りに必要なスキルは全て日々の積み重ねだ。
奴は完全にコースを塞ぎながらへばりついてくる。

四十を過ぎて未だ現役バリバリ。1年もブランクのあるおれに振り切れる相手じゃなかった。


だが、これからがおれの真骨頂。「天才」と呼ばれた技の見せどころだ。


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