レイアップ
「お前いつから、左利きになったんだ?」
呆れたような声で奴がいった。
「別に左利きな訳じゃないよ。ただ、左手でシャーペンや箸つかったりして練習してただけ」
「そんなことくらいで簡単に身につくもんでもねえだろ」
「そんなことくらいで身についちゃったんだから仕方ないだろ。でもやっぱり、右手の方が少しだけ確率高いけど」
「生意気な奴だ」
鼻でふと笑ながら、叔父はコートの外にあるボロいベンチに腰掛け、煙草に火をつけた。
「おれ、もう行くから」
「ああ、好きにしろ。約束は果たされた」
空を見上げて、叔父は煙を吹かした。
「ただな、シュウ・・・」
ろくに緑も見えない場所なのに。姿を隠したセミの鳴き声がミンミンと聞こえた。