レイアップ
「お前、本当にそれでいいのか?それで満足か?」
おれは何も答えなかった。答えられなかった。
「確かにおれは、負けた。お前がバスケを辞めても誰も文句はいわないし、もう、誰もお前を縛ったりはしない。けどな・・・」
「辞めても、じゃない。もう辞めたんだ。それに、元々おれは、誰にも縛られてなんかない。もちろんアンタにも。だからこの勝負に意味なんてないんだ。いい加減ガキあつかいするのはやめてくれ」
思わず、声を上げた。
精一杯の抵抗だった。
もう、これ以上おれに何もいわないでくれ。煮えたぎる感情を抑えながら、おれは奥歯を噛み締めた。
しかし、怒りを向けられた当の本人は、深いため息でもつくみたいに、またタバコを一息吹かした。
どこから出したのか分からない携帯灰皿で火を消す。
バスケットボールの形をした真ん丸い銀色の携帯灰皿。
そして、立ち上がった奴の手には本物のバスケットボール。
「あのな・・・」
口を開いた叔父の目は、ボールの縫い目を追う様に手元を游いだ。