レイアップ
「今度、高校の監督をすることになったんだ。そこの学校の教頭から話しがきて。その人には、昔よく世話になってな。断り切れなかった。毎年、いろんな中学から才能のある生徒を引き抜いて、チームを組んでるらしいんだけどな、今年はどうもそれが上手くいってないらしい」
だからなんだよ。手元でボールを転がしながら、奴の視線はまだ下を向いている。
「よかったじゃないか。ミニバスのガキ相手にしてるより、よっぽどシゴキがいがあって」
珍しく何かをためらっている様な奴の顔にイライラした。
「悪いけど、おれ時間ないから」
その場にいるのがめんどくさくなって帰ろうとするおれに奴がいった。
「お前もこないか?」
その言葉に、おれの中心でガチガチに固まっていた何かがグラッと揺れた。
そして、その揺れを感じた瞬間に、おれの体は勝手に動き出していた。目の前にいる自分の叔父に向かって一直線に。
コンマ数秒遅れて、おれは、自分が奴に掴みかかろうとしていることに気付いた。