レイアップ
だが、あと数センチ。
おれの手は、奴に触れることなく交わされた。
その代わり、鋭い膝蹴りがおれの腹筋を貫く。
息が止まり、体がくの字になった所をカンパツ入れずに次の一撃。奴の左腕の龍が火を噴いた。
殺人的コンビネーション。
そして、眉ひとつ動かさず、倒れたおれを見下ろす。
「シュウ、不良やるんだったら喧嘩のやり方もちょっとは上手くなれ」
今すぐあの憎たらしい顔面を殴ってやりたかったが、余りに気持ちいいのをもらってしまった為、すぐに立つことができなかった。
口元が切れて血が滲む。
幸い歯は折れてない様だった。血を拭い、ふらつきながらもようやく立ち上がる。
最悪だ。なんでおれ殴られてんだ。まだ、頭にダメージが残っているせいか足がおぼつかない。
無言で奴に背を向け、よろよろコートを後にする。
「シュウ」
その声を聞いて、ふわふわしていたおれの脳みそは、キュルキュルと音を立てて瞬時に危険回避の巻き戻しを行った。
ヤバい。またボールが飛んでくる。