レイアップ
自転車をこいで体育館へ向かった。少し寄り道をしてしまったが、それでもまだ約束した時間には余裕がある。正門は夏休みで閉まっているので校舎の裏に自転車を止め、体育館に一番地近い塀をよじ登り中へ忍び込んだ。いつもの様に壊れた鉄扉を開く。
「おはよう。今日は早いね」
人差し指の上でボールをクルクルと回しながらミウが立っていた。おはようというには少し時間が遅すぎるが、おれも同じ様に挨拶を返す。
「今日はおれの方が先だと思ったのにな」
「残念でした。私はいつだって一歩先を行く女だからね。だから彼氏を待たせたりなんかもしないの。以外と尽くすタイプなんだよ」
「彼氏?」
「言っとくけどシュウのことじゃないからね、ちょっと期待した?」
「別に」
「つまんないなー、ちょっとは期待してよね」
そういいながらミウは唇を尖らせる。そんな顔を見ているとなんだか不思議と落ち着いた気分になった。さっきあんなことがあったからだろうか。ミウと話していると自然にリラックスしている自分がいる。
「ところでさ、そのボールどうしたの?」