レイアップ
最後に叔父がいった一言。
「これからも、たまにはここを使ってやってくれ。せっかく造ったのに、誰も遊ぶ奴がいなくなったらこのリングも寂しがるからな」
『造った』の意味が良くわからずにいると、あの少年がボードの裏をおもむろに指差した。
少年の側に近ずき、その指の先を見ると、そこには小さく目立たないようにこう書いてあった。
日本バスケットボール協会元全日本代表
13 麻生龍夫 選手 寄贈
日本代表。不思議とその文字に驚きは感じなかった。それよりも、結局おれは叔父の手のひらで転がされいたという事実が悔しかった。自分の場所だと思っていたこの場所も全て叔父が用意したものだ。
夢の中の少年は静かに背を向けて歩きだす。翼の生えた背中には13の数字。
おれが初めて貰ったユニホームの番号。
そして叔父の名前の横に書かれてる数字。
全ては叔父の造ったシナリオ。
だが、そのシナリオも今日で完結だ。
叔父の決定的なミス。
それはおれを選んでしまったこと。ミウの様な「才能」と出会えなかったこと。
そう、叔父のシナリオにあって、おれには足りないもの・・・。
おれには「才能」なんて無かったんだ。